猫の大動脈血栓栓塞症のお話です

2015.10.15.15:37

 大動脈血栓栓塞症とは、心臓内で形成された血栓(血液の固まり)の一部が、大動脈の血流に乗って流れだし、左右後肢の分岐部で詰まることにより突然発症する病気です。
 
 急に後肢が麻痺してふらついたり、両肢の場合は腰が抜けたようになり起立困難になります。痛みのために興奮し鳴き叫んでいるケースもあります。血液が通わないので罹患した肢の爪の血管の色は暗紫色になり、パッドは冷たく白っぽい色になります。肺水腫のために呼吸困難を起こしているケースもあります。
 以上の症状に加えて股動脈拍動の触知が不能な場合に大動脈血栓栓塞症と診断して、直ちに血栓溶解療法の治療に入ります。具体的には人の脳梗塞の時に緊急で使用されるt-PA製剤を使用して、できるだけ早く血栓を溶解させるように努めています。しかし血栓溶解に成功し血液が通いだしたとしても再灌流障害の問題や、発症の原因が心臓病(心筋症)であるため再発するケースも多く、治療の難しい死亡率の高い疾患だとされています。

 当院でも過去9例のうち4例が血栓溶解療法中に再灌流障害や心不全で死亡し、残りの5例も血栓の溶解に成功して歩行可能となり元気に退院しましたが、1年以内に再発または心不全による肺水腫で死亡し、極めて予後の悪い疾患だと痛感しています。
 日頃の健康診断で心筋症を疑う所見が見つかれば、早期から血栓予防薬や心臓薬等の使用で発症を抑えることができるかもしれません。

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院長 黒田佳之

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