アニサキス

2021.05.19.14:14

最近何かとよく話題になっている「アニサキス」。釣り人にとっては常識の寄生虫ですが、ここでもう一度勉強をし直してみました。
 アニサキスは海洋ほ乳類のクジラやイルカの胃腸内に寄生する回虫の幼虫のことで
 す。
 クジラやイルカの糞と共に排泄された回虫卵はオキアミというプランクトンに食べられます。そのオキアミの中で卵はふ化し第三期幼虫まで成長。
 そのオキアミを餌としてサバ、イカ、シャケ、イワシ、サンマなどの魚が捕食しますが、これら魚類の体内では成長できず、第三期幼虫のまま消化管を含む内臓内に寄生し、終宿主であるクジラやイルカに捕食されるのを待っています。クジラやイルカに捕食されて初めて成虫(回虫)になれるのです。
 不思議な自然界ですが、これを寄生虫の生活環と言います。大学時代寄生虫学ではこの生活環をよく覚えさせられました。
 ところでこのオキアミですが、アジやマダイの釣り餌としてよく使われますが、プランクトンだとは知りませんでした。今までずっとエビの仲間だと思い込んでいました(汗)
 アニサキス(第三期幼虫)の多くは魚介類の内臓部分に寄生していますが、不思議なことに魚が死んで時間が経つに連れて内臓部分から筋肉内へと移行します。この魚を人が生で食べることによりアニサキス症と言われる激痛を起こすことになります。人の胃内は強酸性のためアニサキスは苦しくなり時として胃壁に噛みついたり突き刺したりするという訳です。でもアニサキスは傷つくとすぐに死んでしまいますし、胃内でも数日しか生きられませんので、摂取したとしてもこういったことがなく無症状で終わっているケースがほとんどのようです。
 魚の中でも特にサバは傷みが早い上に寿司やしめさばで食べられる機会が多いため、アニサキス症の発生が多いのもうなずけますね。まとめると釣った魚はできるだけ早く内臓を取り除く、イカの刺身は縦にスリットを入れる、釣った魚の刺身は薄造りにする、刺身はよく噛んで食べる(笑)、4~5日以上冷凍した後に刺身にするなどの方法によりアニサキス症の予防はできそうです。
 では犬や猫でのアニサキス症はどうかというと、僕自身日々の診療で一度も経験したことがないし、報告を受けたこともありません。でも漁港内や釣り場近くの野良猫達の間では日常茶飯事に発生していることかも知れません。近い将来「苦しがる猫の胃壁から内視鏡でアニサキスを○匹摘出!」なんていう論文を目にすることがあるかもですね。

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院長 黒田佳之

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